五月残雪、二輪で駆けるサンリンの謎。上信越800キロの旅。【1日目】

 2026年5月5日、午前6時10分。

つくば市稲岡のミニストップに滑り込むと、同時に熊谷さんの顔が現れた。

旅の始まりはいつも、こういう何気ないシンクロニシティが面白い。

圏央道から東北道へと繋ぎ、まずは佐野SAを目指す。しかし、GWの洗礼か、途中で激しい渋滞に捕まってしまった。結果、自宅からトコトコと下道を走ってきた古橋さんの方が、我々よりだいぶ早く到着しているというオチがついた。高速道路のスピードが、必ずしも旅の速さとは限らないのだ。

赤城高原SAまで駒を進めると、遠くに雪を戴いた山並みが姿を現した。これには否応なしにテンションが上がる。

色めき立った我々は、そのまま昭和ICで高速を捨て、国道17号へ下りることにした。

目指すは、三国峠越えだ。

道中、泊まりもしないのに苗場プリンスホテルの駐車場にバイクを停め、皆で記念撮影を決め込む。旅人の特権のような、他愛のない悪戯だ。


「道の駅みつまた」でひと息入れる。

この先、津南へ向かうルートに入ると食事処がなさそうに見えた。

「早めに昼飯にしませんか」

そう提案してみたが、「まだ腹が減っていない」の一言であっさり却下されてしまう。

湯沢の市街地へ抜け、鶴屋湯沢SSで12リットルを給油。驚いたことに、エネオスが2軒並んで立っていた。聞けばそれぞれ別経営なのだという。競争の世界は厳しいな、などと考えていると、SSを出た途端に熊谷さんが「よし、お昼にしよう」と言い出した。

さっき却下されたばかりなのに、これだから旅の仲間は一筋縄ではいかない。

しかし、こういう時に限って適当な食堂が見つからないものだ。

気がつけば国道353号への交差点まで来てしまった。仕方がなく、角のセブンイレブンで弁当を買い込み、駐車場の縁に座り込んで胃袋に流し込んだ。これもまた、悪くないロードサイドのご馳走だ。

せっかくなら清津峡の絶景も拝みたいところだったが、「連休中は予約者のみ」の看板があちこちで冷たく行く手を阻んでいた。潔く諦め、先を急ぐ。

津南で国道117号線を野沢温泉方面へ左折。マウンテンパーク津南の案内に従い、さらに右折する。

スキー場へ向かうワインディングロードは、決して綺麗な路面ではなかったが、ぐんぐんと標高を上げていく感覚が実に気持ちいい。

センターハウスを過ぎると、目の前にゲレンデが広がった。初心者用の迂回コースだろうか、細くクネクネとした道をさらに這い上がっていく。

辿り着いたのは「空の展望台」。

しかし、そこは砂利の未整備地だったため、無理をせずバイクを置いた。そこからさらに上の展望台へと、一歩一歩歩いていく。

そこからの眺めは、なかなかのものであった。

来た道を引き返し、センターハウスの先を左折すると、ほどなく「川の展望台」が現れた。

こちらはしっかりと展望台として整備されている。手すりに身を乗り出すと、眼下には信濃川と彼方には苗場の山々が広がっていた。

次なる目的地は、星峠の棚田だ。

国道403号線から、「脱皮する家」を横目につづら折りを上っていく。下からのアプローチだけで、すでに期待感は最高潮に達していた。

そこにあったのは、素晴らしい眺めだった。

どこからレンズを向けても、そのまま一枚の絵になってしまう。

道路の上には立派なウッドデッキ風の展望台があったが、残念ながら宿泊者専用とのこと。それでも十分、日本の原風景を堪能させてもらった。

さあ、いよいよ上越市へ向かい、日本海に沈む夕日を拝みに行く時間だ。

だがその前に、熊谷さんの希望で糸魚川市のフォッサマグナパークへ立ち寄ることにした。

上越ICから北陸道に飛び乗り、糸魚川ICまで高速道路でワープする。

国道148号線を白馬方面へ進むと、お目当ての看板が見えた。しかし、そこが見学者用の駐車場だとは気づかず、勢い余って通り過ぎてしまう。

気を取り直して引き返す。

うーむ、ここが東日本と西日本の、大地の分け目なのか。そう思うと、ただの風景が急に感慨深いものに思えてくるから不思議だ。

フォッサマグナを後にした時には、時計の針はすでに午後6時を指そうとしていた。

夕日を諦めきれず、途中の名立谷浜SAに滑り込んで悪あがきをしてみたが、夕沈む方角は無情にも木立に遮られていた。

夕日とのランデブーは、次回のお楽しみというわけだ。

上越JCTから上信越道へ分岐し、上越高田ICで下りる。

上越妙高駅は、もう目と鼻の先だった。

ホテルにチェックインを済ませ、すぐ隣にある「釜ぶたの湯」へ。日帰り温泉の熱い湯に身を浸すと、今日一日の走行風と疲れが嘘のように溶けていった。

仕上げは「魚民」で乾杯。

冷えたビールが、火照った体に染み渡る。こうして、密度の濃い一日は更けていった。






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